セラミックでも虫歯になるの?保険の歯とのリスクの違い

セラミックでも虫歯になることはあるの?
先日、患者さんからこんな質問を受けました。
「セラミックを入れても虫歯になることがあるなら、保険の歯でもいいのでは?」
確かに、一理ある考え方です。安くて良い治療ができるのであれば、それに越したことはありません。実際、小さな虫歯であれば保険の材料でも十分に対応できることがあります。
しかし、虫歯の範囲が広がると、保険診療で扱う材料には限界があります。例えば、隣の歯にまで虫歯が及ぶケースや、エナメル質が大きく崩壊している場合です。
今回のコラムでは、そうした「ある程度の規模の虫歯」の場合に、セラミックと保険の歯でどのような違いが生じるのかをお話しします。私にとっては両者の品質には雲泥の差がありますが、患者さんからすると違いが分かりにくいことも少なくありません。だからこそ、このテーマを取り上げることにしました。
なお、一口に「レジン」といっても品質には幅があります。ここでは、一般的に保険診療で使用されるレジンについて述べていきます。
どんな素材を選んでも、虫歯リスクをゼロにすることはできません。天然の歯だって日々の生活の中で少しずつリスクがあるように、セラミックも同じなのです。
素材によって虫歯リスクは全く違う

先ほど「セラミックと保険の歯の品質は雲泥の差」と言いましたが、では具体的に何が違うのでしょうか。
実は、素材によって虫歯の再発リスクや耐久性には大きな差があります。保険の歯は、長年使ううちに少しずつ劣化し、境目から虫歯が再発しやすくなります。一方で、セラミックは耐久性が高く、表面も滑らかで菌がつきにくい素材です。そのため、再治療のリスクを大幅に減らすことができます。
もちろん、セラミックでも虫歯になる可能性はゼロではありません。しかし、リスクの強さが全く違うことは知っておいていただきたいポイントです。
さらに、一生の間に一つの歯に加えられる治療の回数は限られており、一般的には3回が限度です。やり替えのたびに歯は少しずつ削られ、最終的には神経を取らざるを得なくなることもあります。
だからこそ、初めから再治療のリスクが低い素材を選ぶことが、長期的に歯の健康を守るためには重要なのです。
再発リスクを下げるためにできること

セラミックは再治療のリスクを大幅に減らせますが、絶対に虫歯にならないわけではありません。そこで、日々の生活でできることや、歯科でのケアを組み合わせることが大切です。
- 精密な治療で詰め物や被せ物を入れる
境目の精度が高い治療ほど、虫歯が入り込むリスクが下がります。 - 毎日のブラッシングとフロスで菌を減らす
甘いものや間食の後は特に丁寧に。フロスや歯間ブラシで歯と歯の間もケアしましょう。 - 定期検診で早期発見
小さな虫歯や被せ物のわずかな劣化でも早めに対処すれば、再治療の範囲を最小限にできます。
どんな時に虫歯になるの?
虫歯は、どんなに良い素材を入れても完全に避けられるわけではありません。特に次のような条件が重なると、再発のリスクが高まります。

- 歯磨きが不十分なとき
磨き残しがあると、歯と被せ物の境目に菌がたまりやすくなります。 - 甘いものや酸性の飲食が多いとき
糖分や酸によって歯の表面が溶けやすくなり、虫歯の進行を促します。 - 被せ物や詰め物の境目に隙間があるとき
精度の低い治療や経年劣化でできた隙間から菌が入り込み、二次カリエス(二次虫歯)の原因になります。 - かみ合わせの負担が大きいとき
被せ物が欠けたり、微細なひび割れが起こり、菌が入りやすくなることがあります。
材料の劣化とは?
どんな素材でも、長く使ううちに少しずつ変化が起こります。これを「材料の劣化」と呼びます。
- レジン(保険の歯)
プラスチック素材のため、日々の咀嚼や歯ブラシの摩擦で表面に小さな傷がつき、菌がたまりやすくなります。 - 銀歯(保険の金属)
長年使うと歯との境目にわずかな隙間ができやすくなり、そこから菌が入り込みやすくなります。
一方、セラミックは、エナメル質の同等の硬さがあり、滑らかで菌がつきにくい素材です。そのため、材料の劣化による二次カリエス(二次虫歯)リスクは保険の歯に比べて低くなります。

セラミックと保険のレジンの差は、日常生活で使うものに例えると分かりやすいかもしれません。プラスチックの容器と陶器の食器の違いです。プラスチックは傷がつきやすく、長く使うと劣化してしまいます。一方、陶器は丈夫で表面も滑らか。長くきれいに使うことができます。
同じように、レジンは使ううちに劣化して境目から虫歯になりやすく、セラミックは耐久性が高く、表面も滑らかで菌がつきにくいのです。
セラミック治療の価値
セラミックは「天然エナメル質」とも呼ばれ、歯のエナメル質に非常に近い性質を持っています。歯科治療では、虫歯や汚れた部分を取り除き、歯を再構築していきます。
歯は構造ごとに性質が異なります。歯髄や象牙質には弾力性があり、エナメル質は硬度が最も高く、歯の内部組織を守っています。そのため、治療の際には歯髄・象牙質・エナメル質それぞれの性質に合わせた材料を使って再構築することが大切です。こうすることで、より天然歯に近い感触や耐久性を持つ、自然で丈夫な歯を作ることができます。

歯髄・象牙質・エナメル質から成る。

もちろん、セラミック治療は高額ですが、長期的に見ると再治療リスクを減らす効果があり、第一選択になることが多いです。何よりも大切なのは天然歯そのもの。私は、天然歯1本の価値は「100万円以上」と言っても過言ではないと感じています。
まとめ:大切な歯を守るためにできること

セラミック治療は、虫歯の再発リスクを減らし、天然歯に近い性質を再現できる治療です。しかし、どんなに良い素材でも、日々の生活やケアが大切なのは変わりません。
歯を長持ちさせるために、できることは次の3つです。
- 再治療リスクの低い素材を選ぶ
セラミックなど、長く使える素材を選ぶことで、やり替えの回数を減らせます。 - 毎日のブラッシング・フロスで菌を減らす
甘いものや間食の後は特に丁寧に。フロスや歯間ブラシで歯と歯の間もケアしましょう。 - 定期検診で早期発見
小さな虫歯や被せ物のわずかな劣化でも、早めに対応すれば治療の範囲を最小限にできます。
大切なのは、素材選びと日々のケアを組み合わせることです。セラミックは確かに高額ですが、天然歯を長く守るために必要な投資と考えていただければと思います。
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