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歯のひび割れに要注意 ― クラックトゥース症候群 Cracked Tooth Syndrome とは~見逃されやすい「噛むと痛い」症状の正体~

歯
目次

~見逃されやすい「噛むと痛い」症状の正体~

「冷たいものがしみるけど、虫歯じゃないと言われた…」
「噛んだときに一瞬ピリッと痛むけれど、どこが原因かわからない…」
「歯医者では異常なし。でも、やっぱり違和感が続いている…」

こんな不思議な歯の痛みや違和感に悩まされていませんか?
それ、もしかすると “クラックトゥース症候群(歯のひび割れ)” かもしれません。

この症状は、レントゲンや肉眼では発見しづらく、見逃されやすいのが特徴です。
そのため原因不明のまま放置され、悪化してしまうケースもあります。

この記事では、クラックトゥース症候群の特徴的な症状、原因、発見方法、そして治療法まで、歯科医の視点からわかりやすく解説しています。

「なんとなく気になるけれど、はっきりしない歯の痛み」がある方は、ぜひ一度チェックしてみてください。

クラックトゥース症候群~Cracked Tooth Syndrome~とは?

聞き慣れないけれど、意外と身近な疾患

クラックトゥース症候群(Cracked Tooth Syndrome:以下CTS)とは、歯に微細なヒビ(クラック)が入ることで、噛んだときや冷たいものを口にしたときに痛みを感じる状態を指します。
外見上の大きな損傷がないため、見落とされやすく、他の疾患と混同されがちです。

どんな人がなりやすい?

以下のような条件をもつ方は、CTSのリスクが高まります。

  • 歯ぎしり・食いしばりの習慣がある
  • 大きな金属の詰め物が入っている
  • 過去に神経の治療をした歯がある
  • 硬いものを好んで噛む食習慣がある
  • 年齢が40歳以上(象牙質の弾性が低下)

これらの要因により、歯に繰り返し力が加わり、目に見えないヒビが生じると考えられています。

症状と診断の難しさ

症状は「なんとなく痛い」「噛むと響く」など

CTSの初期症状は非常にあいまいです。

・噛んだときだけズキッと痛む

・冷たい飲食物でしみる

・痛みが続かず、歯医者に行くと症状が消えている

このように、慢性的ではない一時的な痛みであることが多く、受診しても「異常なし」と診断されてしまうケースもあります。

見えないヒビをどう見つけるか?

CTSの診断は簡単ではありません。レントゲンに写らないヒビも多いため、以下のような複数の方法を併用して慎重に診断します。

  • マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)による観察
  • 咬合紙による圧力テスト
  • 染色液によるヒビの可視化
  • 咬合診断(咬み合わせの分析)

一つの検査では見逃されることもあるため、精密な診査診断が求められます※1

クラックトゥース症候群の治療法

ヒビの深さと範囲で変わる治療方針

クラックトゥース症候群の治療は、クラックの深さや歯の保存状態によって異なります。

浅いヒビ(エナメル質まで):経過観察またはコンポジットレジン充填

象牙質まで達するヒビ:セラミックやクラウンによる補強

神経に達するヒビ:根管治療+クラウン

歯根まで達するヒビ:抜歯が検討される場合が多い

クラックトゥース症候群の診断

ヒビの進行度に応じた適切な治療介入が、歯の寿命を左右します。

早期発見が重要な理由

ヒビのある歯は、時間の経過とともに割れが拡大していく傾向にあります。
初期段階での治療なら、神経や歯根を温存できる可能性が高くなりますが、発見が遅れると抜歯を余儀なくされるケースもあるのです。

予防と再発防止のために

日常生活での注意点

CTSは再発する可能性もあるため、予防が非常に重要です※2

  • ナイトガード(マウスピース)による歯ぎしり対策
  • 硬い食べ物(氷・硬い飴など)の習慣的な咀嚼を避ける
  • 咬合バランスの調整(歯並びや被せ物の再評価)

とくに「知らずに歯ぎしりしている」方は、定期的な歯科健診での指摘が有効です。

まとめ|「違和感」を放置しないことが、歯の未来を守る

クラックトゥース症候群は、軽度な違和感から始まる一方で、見逃すと重症化しやすい疾患です。
日常的な「噛んだ時の違和感」「一瞬の痛み」こそが、精密な診断と治療のきっかけになります。

患者さんご自身の違和感と向き合い、歯科医師による早期診断と対処を受けることで、歯の寿命を大きく伸ばすことが可能です。

🔶こんな症状ありませんか?

噛むときだけ痛む

冷たい飲み物がしみる

歯に異常はないと言われたけれど不快感が続く

こうした症状が続く場合は、クラックトゥース症候群の可能性も視野に入れて、歯科医院に相談してみましょう。

見えないトラブルを見逃さないために

クラックトゥース症候群と似た症状は、根管治療の再感染や、歯根破折でも起こることがあります。
原因がはっきりしないまま放置すると、抜歯が必要になることもあるため、精密な診査・診断が重要です。

当院では、マイクロスコープを用いた精密根管治療(マイクロエンド)によって、こうした複雑なケースにも対応しています。

「なんとなく痛む」「はっきりした原因が分からない」──
そんなお悩みに対して、見えないトラブルを丁寧に見極め、歯を残すための治療方針をご提案しています。
気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

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👉治療済みの歯の痛みや、詰め物・被せ物の不具合を感じている方へ

👉マイクロスコープ・ラバーダムを使った再発予防のための根管治療

参考文献:※1 Kang, S. H., et al. (2016). “A review of cracked tooth syndrome.” Journal of the Korean Association of Oral and Maxillofacial Surgeons, 42(2), 65-70.
https://doi.org/10.5125/jkaoms.2016.42.2.65

※2 Kang, B. W., et al. (2014). “The influence of occlusal force and bruxism on cracked tooth syndrome.” Dental Traumatology, 30(3), 178–183.
https://doi.org/10.1111/edt.12067

AAE/American Association of Endodotists. https://aae.org
画像引用:Twincle family dental care. https://www.twinkledental.com.sg/

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