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なぜ?メタルコア(金属コア)で歯が割れる〜歯根破折のリスクと予防策

歯牙破折

知らないうちに進む“見えないダメージ”。あなたの歯を守るために知っておきたい真実

「しっかり治療したはずの歯が、また痛い…」
「噛んだときにピキッと音がして、歯が欠けた気がする」
「銀歯や差し歯の下で虫歯が再発しているかも…」

そんな不安を抱えている方はいませんか?

実はその影に潜んでいるのが、メタルコア(金属コア)”による歯根破折です。
メタルコアは、かつて保険診療で広く使われてきた治療法。強度が高く、当時は「歯を守るための材料」として選ばれてきました。

しかし、いまではその“硬さ”や“しなりにくさ”が、天然の歯には大きなリスクになることがわかってきています。歯の内部で小さなひび(マイクロクラック)が広がり、ある日突然、「歯がボロボロに割れて抜歯しかない」という結果に至ることも珍しくありません。

大切なのは、そうなる前に「原因を知ること」。
このコラムでは、患者さんからよく聞く「歯が割れた」「歯がボロボロになった」というお悩みの背景にある、金属コアのリスクを専門的な視点からわかりやすく解説し、“壊さないための治療選び”についてお伝えします。

目次

メタルコア(金属コア)とは? 歯にどんな影響を与えるのか

メタルコア
メタルコア

歯の神経を取ったあと、「歯をどう守るか」はとても大切です。
そのときに使われるのが メタルコア(金属コア)

保険診療で昔から広く使われてきましたが、実はその性質が歯に思わぬ負担をかけることがあります。
また、過去に行われた治療で、コアの補強に スクリューピン が使われている場合もあります。

保険診療で使う金属コア(メタルコア)とは

  • 歯の内部に入れて土台となる
  • 被せ物(クラウン)を安定させる
  • 歯の補強材として機能

金属コアの特徴とリスク

象牙質は「ゴムのようにしなやか」な性質を持っており、噛んだときの衝撃をある程度吸収できます。
一方で、銀合金のコアは「硬いプラスチック」、そしてスクリューピンに使われる金属はさらに硬く、「小さな鉄の棒」のようなイメージです。

このため、象牙質に比べて硬い金属を歯根に入れると、噛むたびにその衝撃がダイレクトに歯の根に伝わります。
小さなヒビ(マイクロクラック)が積み重なることで、将来的に歯が割れたり、破折につながるリスクが高まるのです。

この性質が、咬む力や衝撃を歯にダイレクトに伝えてしまい、少しずつマイクロクラック(小さなヒビ) を生む原因になります。
小さなヒビは自覚症状がなくても進行し、やがて被せ物の破損や歯根破折につながり、最悪の場合は抜歯が必要になることもあるのです。

メタルコア
口腔内で錆びた銀合金のメタルコア
歯根破折
メタルコア治療歯に見られる歯牙破折

弾性係数の違いがカギ

歯の象牙質は「15〜20 GPa」程度のしなやかさを持っています。
これに対して、銀合金コアは「40〜60 GPa」と約2〜3倍の硬さがあります。
つまり、象牙質と比べて“しならない”ため、歯と調和しにくいのです。

さらに注意が必要なのが スクリューピン です。
歯の補強として使われることがありますが、ステンレス鋼(約190〜200 GPa)やチタン合金(約110 GPa)といった非常に硬い金属でできています。
これは象牙質に比べて10倍以上もしならないため、噛む力がピンの周囲に集中し、歯根にヒビが入りやすくなってしまうのです。

例えるなら、ゴムのようにしなやかな象牙質の中に「小さな鉄の杭」を打ち込むようなもの。短期的には歯を支えてくれても、長期的には歯を壊してしまうリスクを抱えています。

とくに、神経をとった歯は、時間をかけて徐々に枯れ木のような状態になっていきます。そこにしなりにくい金属コアが入ることで、歯に過剰な負担がかかり、やがて破折に至ることがあります。

患者さんが気づきやすいサイン

歯の違和感
  • 咬んだときにピキッと音がする
  • 冷たいものや固いものを噛むと痛む
  • 被せ物がぐらつく、欠ける

こうした症状は、「メタルコアによる歯根へのダメージが進行しているサイン」 かもしれません。

金属を使わない支台築造とは?

ファイバーコア
ファイバーコア

「神経を取った歯にメタルコアを入れたけれど、また割れてしまったらどうしよう…」そんな不安を持つ患者さんは少なくありません。実際、メタルコアは強度が高い反面、歯よりもしならないため、歯根にヒビが入りやすいという欠点があります。

そこで近年注目されているのが、金属を使わない支台築造です。具体的には、グラスファイバーを芯材とし、シリカやジルコニアをフィラーとする支台築造用レジンを組み合わせて使います。これらの材料は歯質に近い弾性率を持つため、噛む力を一点に集中させず、全体に分散できます。その結果、メタルコアで問題となっていた歯根破折のリスクを大幅に軽減できるのです。

実際に、ファイバーポストとレジンを用いた支台築造は、メタルコアに比べて歯の生存率が高いことが報告されています。材料が歯質と調和することで、噛む力を自然に逃がし、「しなやかにしなる」構造をつくれることがその理由です。

つまり、金属を使わない支台築造は歯を長持ちさせるための有効な選択肢です。「神経を取った歯を少しでも長く残したい」「将来の歯根破折を防ぎたい」と考える方にとって、知っておいて損はない治療法といえるでしょう。

破折しても残せるケース

クラック・歯根破折

「歯が割れてしまったら、もう抜歯しかないのでは?」
確かに、特に神経を取った歯は脆くなりやすく、金属コアやスクリューピンが入っている場合、数年後に突然「歯が真っ二つに割れた」というケースも珍しくありません。

しかし、すべての歯根破折が「即・抜歯」につながるわけではありません。
例えば

  • ヒビが浅い段階で見つかった
  • 歯ぐきより上の位置で割れている

    こうした条件がそろえば、精密治療によって歯を残せる可能性があるのです。

実際に行われるのは、ヒビの部分をマイクロスコープで確認しながら最小限に削り取り、レジンで補強する方法や、ファイバーポストを用いる方法です。
このように「壊れかけの歯を支える工夫」を行うことで、歯の寿命を延ばせることがあります。

大切なのは「早期発見」と「精密な処置」。
肉眼では見逃してしまうような細かいヒビでも、マイクロスコープを使えば見つけられる確率が高まり、歯を救えるチャンスにつながります。

「歯が割れたけど残せる?」「歯根破折でも抜歯しない方法は?」と心配な方へ。
すぐに諦める必要はありません。もちろん、すべての歯を残せるわけではありませんが、マイクロスコープによる精密診断や的確な治療によって、残せる可能性が広がるケースがあります。大切なのは「正しい診断」と「早めの対応」です。

精密治療・マイクロスコープの活用による救済例

歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)

「歯が割れた=もう抜歯しかない」と思ってしまう方は少なくありません。私のもとにも「抜歯と言われたけれど、できれば残したい」というご相談が多く寄せられます。

実際には、歯根破折が歯ぐきの奥深くまで広がっていなければ、歯を残せる可能性があります。その見極めに欠かせないのが マイクロスコープ(歯科用顕微鏡) です。
肉眼では見えない細かいヒビや破折の範囲を拡大して確認できるため、従来なら「抜歯」と判断されていた歯でも、保存につなげられるケースがあります。

ただし、ここで注意したいのは 「残せる=一生もつ」わけではない という点です。
一度破折してしまった歯は、どんなに精密に治療を行っても、天然歯そのものの強さや価値にはかないません。

それでも、すぐに抜歯せず 数年でも自分の歯として機能を保てること は、患者さんにとって大きな意味があります。インプラントや入れ歯への移行を急がずに済むだけでなく、「自分の歯で噛める時間を少しでも延ばす」ことができるのです。

「歯根破折でも残せる?」「割れた歯を少しでも長く使いたい」と思った方は、まずは精密な診断を受けることが大切です。

当院の取り組み|“壊さない歯医者”としてできること

「せっかく治療したのに、歯が割れてしまった…」
そんな経験をした患者さんは多くいらっしゃいます。

だからこそ、当院では “壊さない歯医者” を目指し、以下のような取り組みを行っています。

1. マイクロスコープによる精密診断

グランティース武蔵小山歯科のマイクロスコープ

肉眼では見えない歯根のヒビや細かな破折も、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)で確認します。
「破折しているのか」「どこまで進んでいるのか」を正確に見極めることが、歯を残す第一歩です。

2. 金属を使わない支台築造

ファイバーコアとレジンによる支台築造

メタルコアではなく、歯質に近いしなやかさを持つ材料を用いた支台築造を採用しています。
これにより、噛む力が一点に集中せず分散されるため、歯根破折のリスクを大幅に減らせます。

3. 残せる可能性を最大限に引き出す治療方針

診断・治療説明

破折してしまった歯でも、状況によっては延命治療が可能です。
「すぐに抜歯する」のではなく、残せる可能性があるならまずは保存を検討し、患者さんの希望に寄り添った治療を行います。

まとめ:メタルコアではなく歯にやさしい治療を選ぶという選択肢

相談してよかった

歯が大きく欠けたり、神経を取ったりすると「もう残せないのでは?」と不安になる方も少なくありません。確かに、歯根破折や深い虫歯は簡単に治せるものではなく、天然歯そのものの強さや価値にはかないません。ですが、適切な材料選びや精密な治療を行うことで、歯の寿命を少しでも延ばせる可能性があるのです。

特にメタルコアは、強度がある一方で歯に負担をかけてしまい、将来的な破折リスクを高めます。そこで注目されるのが、歯にやさしいファイバーコアやセラミック治療です。柔軟性があるため歯根への負担を減らし、見た目にも自然で、美しさと機能を両立できます。

もちろん、すべての歯が「絶対に残せる」わけではありません。しかし、「抜歯しかない」と思っていた歯が、もう少しだけあなたの生活を支えてくれる可能性はあるのです。

もし「歯が割れてしまった」「根が弱いと言われた」「メタルコアで心配」と感じている方は、一度ご相談ください。精密診断と、歯の状態に合った治療法を提案いたします。

参考文献

  1. 眞坂信夫「垂直破折歯根の接着治療」
  2. 峯篤史「歯根破折防止策の文献的考察」
  3. Factors Influencing Vertical Radicular Fractures in Teeth Supported by Metallic Dental Core: A Scoping Review
  4. Evaluation of fiber posts vs metal posts for restoring endodontically treated teeth — ファイバーポストを用いた歯はメタルポストに比べて中期(3~7年)の生存率が高いと報告されています。 URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30600326/ PubMed
  5. Factors Influencing Vertical Radicular Fractures in Teeth Supported by Metallic Dental Core: A Scoping Review — メタルコアを用いた歯で歯根破折を起こす因子を整理したレビュー。URL: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11044889/ PMC
  6. Comparing survival rates of endodontically treated teeth restored with glass-fiber-reinforced posts vs metal posts — ガラスファイバーポストを使った歯の生存率(92.8%)とメタルポスト(78.1%)との比較。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35430048/ PubMed
  7. Randomized controlled trial comparing glass-fiber versus metal posts over 15 years — 15年という長期で、プリファブガラスファイバーポストなどがメタルポストに比べて生存率・成功率で良い傾向にあることを報告。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40096878/ PubMed

▼グランティース武蔵小山歯科のマイクロスコープ治療|詳しくはこちらをご覧ください

「治療した歯がまた痛む」「歯をできるだけ残したい」とお考えの方へ
以下のページもぜひご覧ください。

👉治療した歯がまだ痛む|根管治療の再発
👉歯を残したい|神経を残す・抜歯を避ける精密治療

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